※個人間のやり取りと定義。
※この地域には権利金の慣習はあるものと前提。

親の土地を貸してもらっていることに感謝はしているので、近隣の相場程度の地代(通常の地代程度)を親に支払っているよ。
だけど親子の間なので、権利金までは払っていないよ。

親の土地を貸してもらっていることに感謝はしているけど、家計にそこまで余裕はなく、地代は相場(通常の地代程度)の40%しか支払っていないわ。
家計に余裕もないことから、権利金も払っていない。

親の土地を貸してもらっていることに感謝はしているが家計が苦しく、地代は一切支払っていない。
しかし、せめてものの思いで、土地の固定資産税だけは、親の代わりに支払っている。

金はあるが一切払っていない。
借りている土地の固定資産税も、名義人である親が負担している。


しっかり地代を払っている、コロマージさんやコロプリーストさん。
実はこの2人、
贈与税無申告の指摘を受ける可能性が高いです!
この仕組みを理解するためには、以下4つの内容を理解する必要はあるので、説明していきます。
- 賃貸借
- 使用貸借
- 借地権
- 権利金
この記事でわかること
賃貸借と使用貸借の違い
借地権の基本知識
権利金の基本知識
贈与税の基本知識
宅建士・FP1級取得者で不動産が得意分野です。
税務署・司法書士に何度も確認しています。
こんな人におすすめ
FP2級・1級受験者(特に1級)
宅建士受験者
親から借りてる土地に対して、地代を払おうとしている人
この記事を読めば、普段聞き慣れない言葉である
- 賃貸借
- 使用貸借
- 借地権
- 権利金
これらの言葉の意味が分かり、資格勉強や日常生活、業務でのアドバイスに役立てますよ。
ひこ
どうしても理解できなければ、
借地に対して、中途半端に地代を支払ってはいけない!
目指すはコロヒーロー、コロファイターさんと覚えておけば大丈夫です。
親の土地に対して地代を払う際の注意点:賃貸借
賃貸借権とは、ある目的物を「有償」で使用収益させること、あるいは、それを約する契約。
「賃貸借契約」の締結によって、
- 貸主(賃貸人)は目的物を使用収益させること、目的物を修繕すること等の債務を負います。
- 借主(賃借人)は賃料を支払うこと、目的物を返還する際に、原状回復すること等の債務を負います。
難しく感じますが、TSUTAYAでDVDをレンタルするイメージを、思い浮かべると分かりやすいです。
さて本題に入りますが、「賃貸借契約」では地代の設定金額によって、「贈与税」が課せられる可能性があります。
例えば、月額地代50万円の相場の土地を20万円で借りている場合。
借主は毎月30万円も得をしていることから、「著しく低い価額の対価で利益を受けた者」として、贈与税の対象となる可能性が高いことです。
相続税法9条の見解は、国税庁HPを参照してください。
▷相続税法第9条の「みなし贈与」について-資本取引等を巡る課税関係を中心として-
したがって先ほどのクイズで、地代相場の40%しか払っていないコロプリーストさんは、
払っていない60%の地代分を利益とみなされ贈与の対象となるのです。

この理屈だけで考えると、
- 借りている土地の固定資産税程度しか払っていないコロヒーローさん
- 何も払っていないコロファイターさん
この2匹も地代分を得しているのに、何故、該当しないのかな。

親の土地に対して地代を支払う際の注意点:使用貸借
賃貸借権とは、借主が貸主から目的物を「無償」で借りて使用収益し、後にその目的物を、貸主に返還する契約。
「使用貸借」は、聞き慣れない言葉です
しかし、実は日常生活に溶け込んでいます。
- 友人から無償でDVDで借りる。
- 親から無償で車を借りる。
- 不動産の世界だと、親族間で無償で土地や建物を借りる。
キーワードは「無償」です。
有償にすると、賃貸借に変わります。
そして使用貸借は、贈与税の対象外となります!!
なぜなら、土地の貸し借りで贈与の対象となるのは、以下2つだからです。
- 前述した「地代」
- 後述する「権利金」
地代において「使用貸借契約」は、民法で無償の貸し借りの権利を定めています。
したがって、そこに損得という利益関係は発生しません。
利益関係がなければ、贈与税の入り込む余地はありません。
また、権利金を支払うことで、借主の権利を強くすること(借地権)ができます。
しかし「使用貸借」は、そもそも無償であります。
したがって賃貸借と違って、賃料を支払っていない借主の権利を強くする必要性はありません。
(借主の権利が強くなる=貸主の義務が強くなる)
このことから「使用貸借」では、権利金は不要となります。
権利金が不要である以上、贈与税の入り込む余地はありません。
また、民法595条で、「借主は、借用物の通常の必要費を負担する」と定められいること。
過去の最高裁で、「借地の固定資産税は通常の必要費に含まれる」との判例があること。
この2つの事実により、
固定資産税だけを払っているコロヒーローさんも、使用貸借と扱われ、贈与税の対象外となります。
余談
2020年4月の改正民法では「使用貸借」は、要物契約から諾成契約に変更となっています。
したがって、これまでの「当事者双方の合意+目的物の引き渡しなどの給付」から「当事者双方の合意のみ」で契約が成立するようになり、契約終了についても文言が変更となっています。
これまでは、友人からDVD(目的物)を実際に借りた時点で「使用貸借契約」が成立しました。
ところが改正民法では、友人との無償貸し借りの合意があった時点で「使用貸借契約」が成立することになります。
親の土地に対して地代を支払う際の注意点:借地権と権利金
- 「借地権」とは、土地を借りて、その土地に自分の家や建物を建てられる権利のこと。
- 「権利金」とは、土地や建物の賃借権を設定したり、譲渡したりするときに、賃借人が地主・家主に支払う金銭のこと。
賃貸借については民法で定めています。
しかしながら、TSUTAYAでDVDを借りるのと、第三者の地主から土地を借りるのでは、訳が違います。

「借地権」を設定することにより、契約期間が過ぎても、正当な事由がなければ、借主は契約を更新できるようになります。
借地権と権利金と地代を図で表すと、こんな感じです。
(へっぽこな図でごめんなさい。)
ポイント
借主の権利を確保するための対価として「権利金」
土地を利用することの対価として「地代」(通常の地代)
地代と違って権利金は、普段は見えないので分かりにくいです。
また、権利金を支払わない場合の図を表すと、こんな感じです。
ポイント
権利金を支払っていないため、土地を利用することの対価に加えて、権利金に対応する部分の地代も払う必要があります。
したがって通常の地代より、高い地代を支払わなくてはなりません。(相当の地代)
「通常の地代」と「相当の地代」の違いは、上記の通りです。
計算式としては、
通常の地代=土地の価額×(1-借地権割合)×6%
相当の地代=土地の価額×6%
例:土地価格1,000万円、借地権割合40%の場合
通常の地代=1,000万円×(1-0.4)×6%=36万円
相当の地代=1,000万円×6%=60万円
したがって、先ほどのクイズで、通常の地代は払っているも、権利金は納めていないコロマージさんは、
親(貸主)からコロマージさん(借地権者)に、「権利金相当額の贈与」があったと、みなされる可能性があります。
このことを「借地権の認定課税」と言います。
注意
権利金を授受する慣行がない地域では、権利金を支払わないことによる贈与の問題は生じません。
また前述した、使用貸借による土地の貸し借りの場合や、相当の地代を払っている場合も、贈与とみなされません。
権利金の一般的な相場は、借地権の価格の3~7割と大雑把なので、権利金を支払う場合は、事前に専門家に確認しましょう。
親の土地に対して地代を支払う際の注意点:まとめ
個人同士が権利金を支払わず、地代においても、無償もしくは底地の固定資産税程度の支払いで、土地を貸し借りした場合は、何ら問題ありません。
むしろ、中途半端に地代を払うと「借地権の認定課税」や「経済的利益を得た」とみなされ、贈与税の対象となるため注意は必要です。
相続対策では、使用貸借より土地評価が下がる賃貸借の方が有利になることもあります。
しかしながら、
- 我が家は相続税と縁がない(相続財産が3,000万円+法定相続人×600万円の範囲内)
- 親族間の紛争の懸念は低い
この2つに該当しているのであれば、使用貸借の方が良いです。
(地代を受け取った場合、貸主は地代を不動産所得として、確定申告する必要もあります。)
どうしても地代を払いたい方は、地代でなく、贈与の名目で、基礎控除110万円以内の範囲で、金銭を「不定期」に渡しましょう。
(支払日や金額を定めると、定額贈与に接触する可能性があるため。)
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
P.S 最初のクイズでお金を一切払っていないコロファイターさんのモデルは僕です。
免責事項
記事の内容は、投稿時点での税法その他の法令に基づき記載しています。
また、分かりやすさを重視して、厳密ではない解説をしている部分があります。
本記事に基づく情報により、実務を行う場合には、必ず専門家に相談のうえ行ってください。